建設業許可申請イメージ

欠格要件とは、建設業の許可や許可の更新を受けようとする場合に、申請者が建設業を許可するだけの資格に欠けるとされる要件のことで、欠格要件に該当していると、他の要件を全て満たしていても建設業の許可は下りません。

欠格要件は、建設業法第8条に規定されており、一般建設業と特定建設業(同法第17条で準用)のどちらでも適用されます。

欠格要件の概要

建設業の欠格要件は11項目ありますが、大きくいくつかに分類することができます。
それ以前に、建設業の許可申請書や添付書類に虚偽の記載があったり、重要な事実について未記載があったりするだけで、欠格要件に該当してしまいます。
書類の不備によって許可が下りないのは当然ですが、欠格要件の1つにでも該当すると許可が下りないという厳しい条件です。
※ただし、許可の更新の場合は、後述する①、⑦~⑪のいずれかです。

欠格要件の詳細

ア:制限行為能力者または破産者の職業制限

①成年被後見人、被保佐人、復権を得ない破産者に該当

例えば建設請負契約のように、契約という法律行為を行うためには、結ぶ契約に対しての意思能力が必要です。
意思能力を欠いた状態で交わされた契約は無効になってしまうため、契約者には法律行為に対しての判断能力が備わっていなければなりません。
この法律行為に対する能力が、精神的な疾患などにより不十分であるとされる者を制限行為能力者といって、以下が該当します。

・成年被後見人
・被保佐人

どちらも聞き慣れないかもしれませんが、「被」が付いているのは家庭裁判所が成年後見人や保佐人を選任し、当人の法律行為に関わるためです。
当人は法律行為に対する能力が欠けているため、建設業の許可申請をすることができません。

続いて破産者については、負債や借金を抱えて破産手続の申立てを裁判所に行うと、破産手続が開始決定されたその時点で破産者となります。
一般的には免責(借金等の支払い義務がなくなること)までが破産手続のイメージですが、免責があってもなくても破産者です。
破産者になると同時に職業や資格等で一定の制限を受け、この制限が解除されることを復権と呼びます。

つまり復権を得ない破産者とは、制限が解除されていない破産者のことで、以下が該当します。

・破産手続の開始決定から免責許可決定を受けるまでの間にある者
・免責不許可決定がされた場合は、破産手続の開始決定から10年を経過しない者

このことから、破産者となっても免責されていれば建設業の許可申請が可能で、免責されなくても10年経つと可能です。

これらの欠格要件に該当していないという判断は、許可申請書に添付する次の2つの添付書類によって行われます。

・法務局が発行し、成年被後見人や被保佐人として「登記されていないことの」登記事項証明書
・市区町村が発行し、成年被後見人、被保佐人、復権を得ない破産者のいずれにも該当していないことを証明する身分証明書(いわゆる本人確認書類とは違うことに注意)

イ:建設業法第29条第1項第5号・第6号での許可の取消し関連

建設業法第29条第1項第5号は、不正な手段によって建設業の許可や許可の更新を受けた場合です。
建設業法第29条第1項第6号は、同法28条第1項に定められる内容に該当して情状が重いと判断される場合、または営業停止処分に違反した場合です。
建設業法28条第1項に定められているのは、適切な施工を怠って公衆に危害を及ぼした、請負契約に関して不誠実であった、規定や政令に違反する契約を締結したなど、建設業を営むものとして不適当とみなされるような状況や行為です。

これらを総合すると、許可等の申請での不正、不誠実で不適当な行為等を行ったことを理由とする、許可の取消し処分に関する欠格要件です。

②許可が取り消されてから5年を経過していない

前述の理由による許可の取消しは、単に許可要件を満たせなくなったことによる取消し、例えば経営業務管理責任者や専任技術者の不在等による取消しと異なり、悪質性や不適当とされる度合いが大きいため、取消しから一定の期間が欠格となっています。

③許可の取消しに係る聴聞の通知があった日から、当該処分(取消し処分)または処分しない決定があった日までの間に、自主的な建設業の廃止の届出をしてから5年経過していない

前述の理由による許可の取消しの前には、行政手続法第15条に基づく聴聞の通知がされます。
聴聞とは、行政庁への出頭による意見陳述または陳述書の提出を行う機会のことで、取消し処分に対し意見ができるということです。
また、自主的な建設業の廃止の届出とは、建設業法第12条第5号に規定される廃業の届出で、以下の理由(同法第12条第1号から第4号)以外の廃業届です。

・許可を受けた建設業者の死亡
・法人の合併による消滅
・法人の破産手続開始決定による解散
・法人の合併や破産手続開始決定以外の事由による解散

つまり、死亡・消滅・解散といった、やむを得ない理由以外での自主的な廃業が聴聞の通知の後に行われた場合、取消し処分を意図的に回避するため(実際は処分しない決定があればセーフでもその決定前の段階)の廃業届と考えられるので、ペナルティとして一定の期間が欠格となっています。

④許可の取消しに係る聴聞の通知があった日から、当該処分(取消し処分)または処分しない決定があった日までの間に、自主的な建設業の廃止の届出があった場合、聴聞の通知の前60日以内に届出を提出した法人の役員・政令使用人、個人の政令使用人であった者で、届出から5年を経過していない

③のように意図的な許可の取消し処分を回避するための廃業届が出された場合、廃業届を出した建設業者は5年間欠格になります。
その建設業者で直前60日以内に在籍していた法人の役員や政令使用人、個人の政令使用人も、同様に5年間欠格とするための規定です。
※政令使用人とは、支配人や支店・営業所の代表者をいいます。

ウ:営業の停止・禁止期間

⑤営業の停止を命ぜられて停止期間内である

営業の停止は、建設業法28条第3項と第5項に定められており、その要件は同条第1項に定められた規定に基づいた、国土交通大臣や都道府県知事による指示に従わないときです。
建設業法28条第1項は、②における許可の取消しの要件にもなっていて、建設業を営むものとして不誠実で不適当な行為等を行った場合です。

このような行為等を行った場合、情状が重ければ許可の取消しに、軽ければ必要な指示が出され、指示に従わないと1年以内の営業の停止となります。
営業停止期間が終了しないと、建設業の許可申請を行うことができません(許可の更新は可能です)。

⑥営業の禁止を命ぜられて禁止期間内である

営業の禁止は建設業法29条の4に規定されており、一般に考えられがちな営業禁止とは意味が違います。

営業の禁止には2種類あり、1つは⑤の営業停止になった原因について責任を有する法人の役員、政令使用人、個人の政令使用人に対し、営業停止期間と同じ期間、新たに営業の開始を禁止するものです。

もう1つは、②の許可の取消し処分を受けた原因について責任を有する法人の役員、政令使用人、個人の政令使用人に対し、許可の取消しによる欠格期間と同じ5年間、新たに営業の開始を禁止するものです。

この2つが規定されていないと、建設業を営むものが受ける営業停止処分や、建設業を許可された建設業者が受ける許可の取消し処分だけでは、役員や政令使用人が新たに許可を得て営業を始めることが可能になってしまい、実態として営業停止や許可の取消しが意味を為しません。

エ:刑罰に対する欠格

⑦禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない

法律を問わず違反して禁錮以上の刑に処せられた者についての欠格要件で、「刑の執行を受けることがなくなった日」とは、時効や恩赦などによって刑の執行を受けることがなくなった日です。
同じく刑の執行を受けないものに執行猶予がありますが、執行猶予の場合には、執行猶予期間を終えると刑の言渡しそのものがなくなるので「刑に処せられ」には該当しません。

・実刑の執行後→5年経過しなければ許可申請できません。
・時効や恩赦など→5年経過しなければ許可申請できません。
・執行猶予期間中→許可申請できません
・執行猶予期間経過後→許可申請できます(5年経過は必要ありません)

⑧建設業法、建設業法施行令に定められた法律、その他一部の法律に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない

罰金は刑罰の中でも軽い部類ですが、建設業法、建設業法施行令に定められた法律、その他一部の法律では罰金であっても5年間欠格となります。
なお、一部の法律とは以下の通りです。

・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(同法第33条の3第7項、第32条の11第1項を除く)
・刑法第204条(傷害)、第206条(現場助勢)、第208条(暴行)
第208の3(凶器準備集合及び結集)、第222条(脅迫)、第247条(背任)
・暴力行為等処罰に関する法律

オ:許可(または許可の更新)申請者以外の欠格

⑨営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が①~⑧に該当する

未成年者について少しわかりにくいですが、逆に未成年者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有する、つまりこの欠格要件に該当しないためには、以下のいずれかを必要とします。

・法定代理人が一種あるいは数種の営業を許可する(民法6条第1項)
・婚姻による成年擬制で行為能力を得る(民法753条)

法定代理人とは親(または未成年後見人)であり、法定代理人が営業を許可していない未婚の未成年者は、法律行為に対する能力を持たないため、法定代理人の同意が無ければ契約等を行えません。
したがって、行為能力を有しない未成年者が許可申請を行う場合、法定代理人が許可申請しているのと何ら変わりなく、法定代理人についても欠格要件に該当しないことが必要になります。

⑩法人の場合に役員、政令使用人が①~④、⑥~⑧のいずれかに該当する
⑪個人の場合に、政令使用人が①~④、⑥~⑧のいずれかに該当する

建設業の許可を申請する者だけではなく、法人の役員、政令使用人、個人の政令使用人についても、欠格要件に該当しないことを必要としています。